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特集
◆ 聴覚に障害のある方への教習が始まりました! ◆
聴覚障害者マーク6月1日より、補聴器を用いても警音器の音が聞こえない聴覚障害者の方であっても、次の条件を満たすことにより、運転免許の取得が可能となりました。
  ■ ワイドミラーを装着すること
  ■ 聴覚障害者標識 (左図)を表示すること

また、聴覚障害者を保護するため、聴覚障害者マーク(標識)を表示した車両に対する幅寄せ等が禁止されます。
各教習所では、聴覚障害者の方への教習受入れの準備を進める一方、健常者の方へも、マークや運転時の配慮について指導しなければなりません。
聴覚障害者の方への教習 〜東園 (あずまえん) 自動車教習所の取り組み〜
新座市の東園自動車教習所は、創立時より障害者の方の教習に取り組んでいる。その活動は全国的にも有名で、県内外各地から、多くの障害者の方が免許取得の希望を託して入所している。今回、聴覚障害者の方の運転免許取得に関する法改正に際し、すでに難聴者の方への教習を数多く行っている東園自動車教習所に、その貴重な経験を伺った。
手話は全員が自主的に学び、活用している
「手話を習得させるために、特に養成ということはしていません」と我々が考えていた常識を、学科係長の石橋さんは簡単に覆した。更に、「それぞれが独自で学習したり、手話サークルで活動したりして習得しています。各指導員のやる気とプロ意識です」と言い切る。20名の有資格者は、全員が手話を使いこなし、特に聴覚障害者向け専門の担当者は設けていないそうだ。
筆談やサインも活用 その人が分かりやすいコミュニケーションで
すでに20年以上の経験のある指導員の笹平さんは、「すべきことを相手にいかに正しく伝えるかだと思います」と情熱的に語ってくれた。一般的な会話を手話で一生懸命学んでも、実際の教習ではあまり役に立たないそうだ。むしろ、技能教習に際しては、分かり易いサインを決めておいたり、筆談をしたりして、実際にとにかくコミュニケーションをとり、経験を積むことが必要なのだそうだ。大切なのは、相手に伝えようとする気持ち、分かろうとする意識であると指摘され、健常者への教習でもなかなか出来ない部分を、まさに鋭く突かれた格好だ。
手作りの教材で学科教習の充実を図る
学科教習については、要約筆記の性格を持った学科教本のまとめ資料やトラペンを作成し、講義と同時進行でモニターに映して説明している(字幕などは特に無い)。やはり手話のみの講義では限界があるので、他の教習生と一緒に受けた後に再度同一学科を受講してもらったり、週に2回の「手話学科」を設けて補修をしたりしている。それでも、石橋さんは、「講義に置いてきぼりにならないよう、健聴者と同じペースで理解してもらえるようにしたい」と、教習のレベルアップには貪欲だ。
すべての教習所で聴覚障害者の教習を
こうした特色ある存在の教習所だが、「すべての教習所で聴覚障害者の方の教習を実施するよう促して欲しい」と石橋さんと笹平さんは口を揃えて訴える。他校で断られ、移動困難者の方でもわざわざ遠方から通われる方もいるそうだ。特長を売りにするのではなく、県民の利益を最優先に考え、「すべての方に便利になるなら」という意識には、障害者の教習を続けて来られた人の言葉としての重みがある。
心にバリアフリーを
今回の取材を通じて感じたことは、やはり、インフラ整備にばかりとらわれず、「思い切って始めて」みることの必要性である。「できない」と避ける意識が差別の始まりであるとの指摘にも、地域の交通安全教育センターとしての存在を改めて問われているようにも思われた。とにかく、障害者の方の免許取得を応援しよう、お手伝いしようという意識が必要であり、それこそが指定自動車教習所のあるべき姿であろう。
我々指定自動車教習所は、今回の法改正に際し、「心にバリアフリーを」と、認識を改め、真に地域社会から信頼される存在であるよう努めていきたい。
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